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不動産投資で節税するなら押さえたい減価償却の注意点

川端 彰

川端 彰

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不動産投資を難しくしている材料のひとつに「減価償却費」という会計上の経費項目があります。経費に占める割合が他の何よりも大きいので、不動産を使った節税を画策する人にとっては絶対無視することのできない関門といえそうです。これを理解しないでいると、「売却時に税金をガッポリとられた」「会計上は黒字なのに手残りは赤字」という予期せぬ損失に見舞われることも。今回は初心者に人でもわかるよう、減価償却の基礎や事例、注意点を説明します。不動産投資の「転ばぬ先の杖」を手に入れましょう。

目次

1 . 減価償却とは

減価償却」と「税金」は切っても切り離せない関係にあります。国が税金を徴集するために減価償却という仕組みがつくられた一方、個人によっては税金を少なくするための手段として用いることができる仕組みでもあるからです。

1-1 . 国が税金を徴集するための仕組み

資産を購入後、複数の年度にわたって計上
減価償却とは、高値で買った固定資産を複数の年度にわけて経費計上できる会計ルールのひとつ。実際に出費していないのに 、帳簿の上では毎年出費していることになります。その理由について、賃貸経営コンサルのリアル・スター・コラボレーション(東京都新宿区)の星龍一郎社長は「国が税金を徴集するためのひとつのルール」 と話しています。 「例えば3000万円の建物代を一度に経費計上されると、個人の所得額が相当目減りします。そうなると国は『所得税』を徴集できません。税収を減らさないために、固定資産を分割して納めるルールがつくられたのです」(星社長)

所得価額(価値)と減価償却費の関係
減価償却費を計上する分割の回数については、その人が購入した資産の価値(所得価額)に応じて計上することになります。所得価額に対して耐用年数というものが存在し、耐用年数が20年なら原則20回にわけて毎年計上することになります。20回より短い回数を納めようとしても、税務署から承認されないことがほとんどです。

減価償却になる対象
経営者や投資家が収益を生み出す道具として購入した固定資産を指します。 例えば工場が機械や装置を購入したらそれは「設備投資」となり、減価償却の対象になります。その他にも船舶や自動車、不動産などが該当します。

不動産は機械や自動車と異なる
不動産という投資商品の場合は、それ自体の購入金額が高いため、個人が節税するための手段として使うことも出来れば、売却時に思わぬ損失に見舞われるリスクも生じます。詳細は後述します。

2 . マンション減価償却の計算方法

減価償却の計算」というと、どうも小難しい響きが付きまといますが、理解してしまえば結構シンプルです。建物金額などの必要な数字をそろえ、複数ある計算方式のなかからどれかひとつを選んで計算すればいいだけです。ただし建物の種類によって耐用年数などが異なったりするので、目にする情報量が多く混乱しそうです。この項目では、必要となる情報を整理しながら説明していきます。

2-1 . マンションの減価償却の流れ

減価償却の計算の前に必要な数字を揃えましょう。

事前準備と用意すべき資料や物件情報
減価償却費はやや複雑な計算によって導き出されますが、算出に必要な数字は各種契約書類や証明書からとってくる必要があります。以下、用意すべき必須の資料と情報を紹介します。

売買契約書
物件の取得価格を確認してください。「建物 」の取得価格が対象になります。「土地」は減価償却の対象にならないので注意してください。

譲渡対価証明書
販売した不動産会社に「譲渡対価証明書」という書類を出してもらいましょう。その書類内に「建物」の価格と、建物に付随する「設備」の価格が記載されています。減価償却費資産としての「建物」には「建物本体」と「建物設備」のふたつの要素が含まれており、どちらも計算に必要な数字となります。

不動産会社への確認
先の売買契約書と譲渡対価証明書は不動産会社が扱っています。

建物本体の金額
主に躯体部分を指します。

建物設備の金額
建物設備とは、建物本体に付随する設備のことです。給湯器やエレベーターなどが該当します。建物本体よりも短い期間で償却できる特徴があります。

中古物件の場合
中古物件においては、土地と建物をわけた価額がなく、さらに建物本体と建物設備の価額も不明瞭なケースが多いです。これに関しては、公益社団法人全日本不動産協会がウェブサイトで国税不服審判所の判例にもとづく合理的な分け方を説明しているので参考にしてください。 (賃貸建物と建物付属設備の取得価額の区分方法)

2-2 . 減価償却の計算方法

減価償却の計算方法は主にふたつあります。定額法と定率法です。不動産を使った節税を考えている人にとっては、その成否が左右される重要な選択になりそうです。

定額法
シンプルな計算方法です。読んで字のごとく「一定の金額」で払い続けるための計算方法です。建物本体と建物設備両方が、この定額法で計算できます。

定率法
先の定額法が「毎年一定の金額」で払い続けるための計算方法です。対して「定率法」も「毎年一定の割合」で減価償却費を計算する方法です。取得金額の1割ずつ払う、と決めた場合、支払い初期の減価償却費は多額になります。しかし年度が経過するごとに取得金額の元金は減り続けるので、残った元金の1割……と毎年度計算していくと、時間の経過とともに計上すべき減価償却費は減り続けます。なお「定率法」は定額法と異なり、「建物本体」にのみ適用されます。「建物設備」は適用外なので注意が必要です。

耐用年数
耐用年数とは、その建物の資産価値の寿命を指します。鉄筋コンクリート造(RC造)は47年、重量鉄骨は34年、軽量鉄骨は19年、木造は22年と決まっています。なお、「建物設備」の耐用年数は構造問わずすべて「15年」です。 中古物件の場合は、「残存耐用年数」というものを割り出します。計算式は「(建物本体の耐用年数+建物設備の耐用年数)」-(経過年数×0.8)=残存耐用年数」(端数切り下げ)となります。購入時すでに耐用年数を経過している場合は、「(建物本体の耐用年数+建物設備の耐用年数)×0.2=残存耐用年数」です。

減価償却費の求め方
「物件の取得価格×耐用年数に応じた償却率」が「減価償却費」です。耐用年数に応じた償却率は「定率法」「定額法」それぞれの計算方法であらかじめ定められています。国税庁のウェブサイトから確認してください。
http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/joho-zeikaishaku/shotoku/shinkoku/070914/pdf/06.pdf
(引用先:国税庁HP)

2-3 . マンションの減価償却が通常と異なる点

なぜ異なるのか
マンションの減価償却は、キャッシュリッチな資産家にとって最高の節税策になります。毎年経費として落とせるのに、現金が財布の中から出ていくわけではありません。お金を手元に残しておきながら、税金を少なくすることができます。

アパートと何が違うのか
4階以上の中高層の建物を指す「マンション」に対し、「アパート」は3階までの低層が一般的。高層であるほど、造りも頑丈になるため、「マンション」は耐用年数が47年であるRC造が一般的です。一方、低層の建物には耐用年数が34年の鉄骨か、22年の木造であるケースが多いです。耐用年数が長ければ長いほど、減価償却費を計上できる期間が伸びることを考えると、マンション投資が資産家の節税対策によく使われる理由がわかると思います。

3 . シミュレーションしてみよう

事例をもとに減価償却費を計算します。 ここでは、 新築マンション取得価格=3,000万円 構造=RC造(耐用年数47年) と仮定します。

3-1 . マンションを建物と土地にわける

分類法
まずは取得価格から「建物価格」と「土地の価格」に分けます。ここでは便宜的に、建物と土地の分類は50%ずつとします。そうなると建物価格は、「3,000万円÷2=1,500万円」となります。

建物を建物躯体と建物設備にわける
土地と建物の分類で求めた「1,500万円」という建物価格をさらに分類します。譲渡対価証明書で確認して、例えばその比率が「躯体80%+設備20%」なら、 建物本体=1,500万円×0.8=1,200万円 建物設備=1,500万円×0.2=300万円 となります。

3-2 . 減価償却の計算

定額法
毎年計上する減価償却費が一定なのが定額法の特徴です。事例に落とし込んだ計算式は、 3,000万円×0.022=66万円 となります。毎年「66万円」が経費として計上できる計算となります。なお計算式の「0.022」という数字は、RC造の法定耐用年数47年に対する償却率を指します。前述の国税庁のウェブサイトの一覧表から確認できます。

定率法
毎年一定の利率で減価償却費を計上するのが定率法の特徴でした。初年度の計算式は、 3,000万円×0.052=156万円 です。定額法より高めですが、年数が経過するほど減価償却費が安くなるのが特徴です。

3-3 . 利用可能年数の確認

先の事例は「新築」を想定しましたが、「中古」を購入した場合は、購入時点の「経過年数」も視野に入れなければいけません。ここでは、先の3,000万円で購入したRC造マンションが「築10年」であったと仮定して計算してみます。

経過年数
中古の場合、経過年数を使って「残存耐用年数」を算出します。RC造の法定耐用年数は「47年」なので、 残存耐用年数=47年-(10年×0.8)=39年 となります。

建物躯体
残存耐用年数を39年とした上で、建物躯体の減価償却費を計算してみましょう。先の計算式では「1,200万円」が建物本体の価格でした。 (定額法) 1,200万円×0.026=31万2000円

建物設備
建物設備は躯体構造問わず一律で「15年」、なおかつ計算式は「定額法のみ」と縛りがあります。先の例に照らし合わせて建物設備の取得価格を「300万円」としたら、 (定額法) 300万円×0.067=20万1000円 となります。

4 . 損をしない減価償却の知識

減価償却の戦略は売却戦略と密接に絡みつきます。賃貸経営コンサルの星社長は「短期売却を考える人ほど注意が必要」と警鐘を鳴らしています。短期売却に潜む落とし穴とは一体どんなものでしょうか。ここからは星社長の説明をもとに解説していきます。

4-1 . 減価償却にまつわる不動産売却時の注意点

減価償却費が大きいと売却時の納税額も大きくなる
定率法などを使いなるべく初期のうちに減価償却費をたくさん払うと、経費をたくさん計上できる分、会計上の建物代(簿価)がみるみる少なくなっていきます。このタイミングで短期売却を画策してしまうと、思わぬ落とし穴にはまることになります。 複雑なので順を追って説明します。例えば7000万円で購入して、初期のうちに減価償却費をたくさん払うと、最初の4年で簿価を5000万円まで下げられます。「5000万円まで償却しましたよ」という段になり、その建物を6000万円で売却できたとします。会計上は1000万円の利益が出るわけですが、この売却益に「譲渡所得税」という税金がかかります。短期で売却したら、売却益に対して約40%も課税されるという大変負担の大きい税金です。せっかく減価償却で税金を安くしたのに、売却時に税金を多めに負担してしまったら元も子もありません。 「個人名義で取得後5年以内に売却したときにかかってくる税金です。5年以降は20%に減ります」(星社長)

購入時は法人名義で買った方がよい
星社長によると、売却をするなら、購入後5年待つか、購入時に法人名義で買うほうが望ましいとのことです。 なぜ個人で売ると「譲渡所得税」を高く課税されてしまうのでしょうか。 「個人の場合は、不動産を売ったときの税金は分離課税といって、不動産を売った利益は他のものとは別に計算されるので、節税のしようがなくなります。本当に節税しようと思うなら、不動産を損して売らなければいけません」(星社長) しかし法人であれば、そういったことは関係なくなります。 「法人の利点は、他の事業の利益や経費とごっちゃにできるところでしょう。他の経費計上をすれば、不動産を売った利益を圧縮できます。法人名義のほうが譲渡益に対する税金を節税しやすいのです」(星社長)

4-2 . 自動計算できるツールやソフト

ここでは必要項目を入力するだけで減価償却費を自動計算してくれるツールを紹介します。

エクセル
減価償却費計算ソフト
www.city.minamisoma.lg.jp/index.cfm/6,2189,c,html/2189/genkasyoukyaku.xls
上記からエクセルデータをダウンロードできます。

アプリ
「ke!san(けいさん」
http://keisan.casio.jp/exec/system/1339479951
⇒平成24年4月1日以後に取得した減価償却資産に適用される減価償却費を計算します。

ソフト
フリーソフトも数多く流通しています。
https://download.goo.ne.jp/software/search/uLqywb3-tdE_/2/index.html
上記URLから探せます。

5 . まとめ

減価償却費を使った節税策は資産家やサラリーマン投資家にとってはメリットの大きい戦略ですが、利がある分だけ十分な勉強とリスク管理が必要です。「短期売却のときに譲渡所得税がかかりやすい」など予期せぬところで思わぬ税金がかかることも知っていれば、売却時を見越したリスク対策を打てるでしょう。「敵を知り己を知れば百戦危うからず」。不動産投資にも同じことがいえそうです。

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