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「食堂付き学生マンション」が増えている理由と勝算

川端 彰

川端 彰

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「左団扇で賃貸経営」。家余りの時代、こうした不労所得神話は終わりを告げようとしています。
ただアパートを建てるだけでなく、投資家本人に戦略と事業性の高さが求められるようになった今、「どんな不動産だったら勝てるか」というアンテナを常時張ることが大切です。

不動産投資家に知ってもらいたいのは、近年増えている学生マンションの存在です。学生マンションとは、学生にとって利便性の高いサービスを備えた賃貸住宅のことです。一般的な画一性の高いマンションよりも需要が見込めそうということで、様々な企業が新規参入に手を挙げました。

学生マンションとは何か。なぜ需要があるのか。メリット、デメリットは。この記事で明らかにしていきます。

目次

1 . 学生マンションのサービス

学生マンションとは、学生だけが住める専用マンションのことです。運営主体が大学である学生寮とは違い、一般の不動産会社が運営しているため、学生や保護者が安心できるサービスや設備が備えられているのが特徴です。

サービスは様々です。オートロックや管理人の常駐といったセキュリティ面、インターネット回線とケーブルテレビの利用環境が充実しているほか、学生同士のコミュニティを育める共有スペースの確保、イベントの実施などです。
気の利いたマンションになると、安い定食が食べられる食堂が備えられたマンションもあります。

サービスが充実しているため、家賃は相場より若干高めになる傾向がありますが、数自体がまだ限られており、竣工後すぐに満室になります。大学や専門学校の近隣に建設されるケースが大半であるため、利便性のよさも人気を集める要因になっています。

こうした需要を見込めることから、学生マンションの供給に火が点こうとしています。
学生マンションの管理会社で老舗の毎日コムネット(東京都千代田区)は、展開エリアを全国各地へ広げる旨を、18年2月に発表しました。首都圏で1万戸弱管理しながら、地方でも年1~2棟のペースで開発・管理受託を進めていく方針です。

また、学生マンション老舗のジェイ・エス・ビー(京都市)は20年10月期までに管理戸数を6万2000戸から7万戸までに増やす計画を掲げました。

2 . 進む新規参入

新規参入も増えています。
東急不動産ホールディングス(東京都渋谷区)は昨年11月、学生マンション専門の学生情報センター(京都市)を買収しました。学生情報センターは4万戸以上を管理している不動産会社で、同社のノウハウを生かしながら東急不動産が学生マンションの開発を進めていきます。

共同案件としては、東京都豊島区の全167戸のマンションが竣工し、来年3月には東京都北区で231戸の大型案件が完成する予定です。

他にも、ホテル・シェアハウスの企画会社のUDS(東京都渋谷区)がおととし8月に学生マンション事業に着手することを発表しました。

今年2月に竣工した神奈川県藤沢市の『湘南台学生レジデンスプロジェクト』は10階158戸の大型案件。建物内にカフェ・イベントスペースを設けていることが特徴です。
また、伊藤忠都市開発(東京都港区)、日本建設(東京都千代田区)、三井不動産系の日本アコモデーションファンド法人(東京都中央区)、積水ハウスSIレジデンシャル投資法人(東京都港区)も参入に名乗りをあげています。

3 . 今後のニーズは?

各社が続々参入できるのは、人口減少下でも18歳人口における大学入学率の推移が今後も安定的に推移するだろうという見通しがもとになっています。

平成27年に総務省統計局が公開した人口推計によると、国内の大学生の人口推移は右肩上がりであることがわかります。
2015年の18歳人口は376万9661人で、20年前にあたる1995年の417万3460人と比べて約10%減少しているものの、内訳の大学生人口は95年の233万831人より約9%多い255万6062人と逆転しています。

大学進学率が安定しているため、人口減少下でも極端に学生マンションの利用者が減ることはないだろうと見立てているのです。 外国人留学生の増加も追い風になっています。
独立行政法人日本学生支援機構が平成29年に公開した「外国人留学生在籍状況調査」によると、平成23年時点の16万3697人から5年後の同29年には26万7042人と約10万人増えています。

特に入学者数の定員割れを危惧している大学の中には、留学生の取り込みに力を入れているケースも多くみられます。誘導策の一環として、学生マンションの開発をデベロッパーに打診する大学も近年では増えているようです。

先に紹介した、老舗のジェイ・エス・ビーは昨年8月に外国人留学生専用の紹介店舗を開設したことを発表しました。大学や教育機関からの問い合わせに対応し、学生マンションに住みたい留学生の部屋探しを促すことが目的です。計4カ国語に対応しています。

こうしたメリットばかりに見える学生マンションですが、一部ではリスクも懸念されています。

4 . リスクに備える

最も大きいリスクは、大学のキャンパス移転でしょう。
学生マンションに詳しい毎日コムネット担当者は「移転リスクは、弊社で特に神経を払っている部分」と強調しています。大学が移転したら、付近の学生マンションは、居住メリットがなくなるため、大部分が空室になってしまいます。一般の賃貸住宅に転用したとしても、付近の物件と競合し、数によっては苦戦を強いられるかもしれません。

そのため、開発する際は、大学の移転リスクの見極めは慎重にならざるを得ません。その大学に移転予定がなくとも、地方郊外の不便立地の大学、都心でも校舎の老朽化が進んでいる大学などは注意が必要です。

また、いつ供給過多になるか読めない点も、ひとつのリスクです。サービスが充実した学生マンションは今は希少性があるかもしれませんが、近年は利回りの高いワンルームマンションの建設が各自治体で制限される傾向にあり、その抜け道として学生マンションが建設されているという事情も噂されています。

いい例が、簡易宿泊所です。訪日観光客の受け皿として、ホテルや旅館よりも建設規制が緩い簡易宿泊所の竣工がここ数年で爆発的に伸長し、あれだけホテル不足が懸念されていた日本国内で、すでに供給過多に陥っているエリアも見られるようになりました。
朝日新聞の調査で、全国20の政令指定都市における管理宿泊所の数は、ここ5年で3倍近くに膨れ上がったことがわかりました。

学生マンションの投資を考えている方は、大学の移転リスク、エリアごとの需給状況、受給予測をかんがみながら、投資計画を立てることをおすすめします。

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