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家族信託セミナーを主宰したがる不動産会社の狙い

川端 彰

川端 彰

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不動産会社のホームページから「家族信託セミナー」「資産形成セミナー」といったオーナー向けセミナーの告知を目にする機会が増えました。大手ならともかく、広く中小企業で見かけるようになったのはここ一年の話です。オーナーはそのセミナーを受けたほうがいいのでしょうか。幾多の取材から、不動産会社の狙いを説明します。

目次

1 . 家族信託とは

家族信託という言葉を頻繁に一般大衆紙で見かけるようになったのはここ1年の話です。

家族信託とは、資産凍結対策です。親が認知症になると、本人の資産を親族が活用したり売ったりすることができなくなります。しかし家族信託という運用手法を使えば、親が認知症になっても、子や親戚が代わりに運用できます。認知症対策とも言い換えられます。

その家族信託という資産運用手法が注目された背景には、国の危惧があります。

総務省統計局が2018年5月に公開した「家計調査報告(貯蓄・負債編)」によると、国内金融資産の69.4%が60歳以上の高齢者が保有しています。16年前の56.2%から10ポイント以上比率が上がっています。その高齢者たちが認知症になってしまったら、彼らが死ぬまでの間、保有財産を活かせなくなる状態になります。

国としては、保有財産を消費(市場に解放)してもらって経済を回したい、そんな意図があるのですが、好転の兆しはありません。それどころか、2025年には人口のボリュームゾーンにあたる団塊世代が70歳代後半にさしかかるため、むしろ資産凍結対策は「待ったなし」の状況といえます。

2 . 家族信託に関する不動産会社の狙い

上記のように社会問題としてクローズアップされている家族信託ですが、不動産会社の狙いは少し別のところにあります。

「家族信託セミナー」を頻繁に開催するのは、賃貸住宅の管理会社、戸建て住宅の売買会社に多く見られます。賃貸管理と売買仲介は、お互い性質の異なる領域で、同じ不動産業でも業務内容は違ってきますが、共通の狙いは「2代目のオーナー」との接点を持つことです。

家族信託を通して親の不動産の運用を2代目オーナーに代行させれば、その不動産の舵とりは、他ならぬ2代目オーナー自身になります。そのため不動産会社は、いつ認知症になってコントロールがきかなくなる高齢の資産家より、いつか継ぐ2代目のオーナーとの接点を持ちたい、もしくはパイプを太く育てていきたいのです。

不動産会社が2代目オーナーと接点を持てば「引き続き弊社に賃貸管理を任せてもらえる(売上が落ちない)」「2代目が家を売りに出すとき、弊社で売買仲介ができる(仲介手数料収入が増える)」といった思惑が働きます。そのため、家族信託の相談や、資産形成のためのコンサルは、お金をとらず、「無料」とするところが多いです。なるべく間口を広げるための、不動産会社なりのサービスと捉えられます。

一方、認知症による資産凍結のリスクは、オーナー自身(又は2代目自身)、今後の資産形成上練っておかなければならない重要事であることから、不動産会社にどんな意図があれ、家族信託は需要の根強い資産運用手法として、今後も広がってくると思われます。

ちなみに、「2代目とつながりたい」という不動産会社の狙いについては、証券会社も同じ悩みを抱えています。証券会社の生命線は、資産家の証券口座と預かり残高の多寡に左右されますが、初代の資産家が亡くなった後、初代の財産を継いだ2代目にも「弊社の証券口座を引き続きご利用いただきたい」と考えます。だから初代と2代目が一緒に参加できる資産運用セミナー等を、野村証券はじめ各社が開催しています。この傾向も、不動産業界と同じくして数年前より始まっています。

話がそれましたが、不動産会社が無料でセミナーを公開してまで、2代目オーナーとのつながりを重視する背景には、一体どのようなものがあるのでしょうか。

3 . 2代目オーナーとのつながりを重要視する理由

ここには、各社「生き残り」をかけた熾烈な生存競争があります。特に賃貸管理会社は、オーナーから管理を任されることで生計をたてています。もっと詳しく言えば、管理戸数、付合いのあるオーナーの人数が、その管理会社の売上を左右しているともいえます。

「新規オーナーに来てもらいたい」

「他社のセミナーに、うちの客がとられてたまるものか」

地場の会社がセミナーを開催すれば、その付近の不動産会社も歩を合わせます。数年かけて、今年になってようやく、全国津々浦々に浸透してきたと言えます。

実はこうした取り組みは、一部の業界団体の仕込みから始まったと捉える声があります。例えば、賃貸管理業界の旗振り役である「公益財団法人 日本賃貸住宅管理協会(日管協)」が6年以上前から、業界の生き残りをかけた「2代目オーナー対策」を仕掛けています。

日管協の三好修前会長(三好不動産社長)が唱えた「不動産管理会社から資産管理会社へ」を合言葉に、オーナーへ資産運用コンサルを行う会社が徐々に現れはじめました。「相続支援コンサルタント」「上級相続支援コンサルタント」といった、協会が創設した資格をそろって取得し、「資産運用の相談ができる不動産会社」が全国的に増えていきました。

したがって、不動産会社が家族信託セミナーを開催したがる背景には、すべてにおいて「2代目とのつながり」をにらんでのことだということがわかります。それ自体は悪いことではなく、むしろ高齢者の資産形成を凍結させない役割を担っている点において、むしろ必要かもしれません。

4 . 重要な「会社の質の見極め」

しかし多くの不動産会社が「資産運用コンサル」を名乗れるようになった以上、どの会社に任せるべきか、セミナー聴講を検討している資産家の方は、質を見極める意識を多少なりとも持ったほうが賢明かもしれません。

見極めるひとつの考え方としては、多様な人材を抱えているセミナーを選ぶのが無難といえるかもしれません。資産形成は、賃貸住宅だけでなく、保険、ファイナンス、あらゆる領域が関係しているため、ファイナンシャルプランナー、司法書士・税理士、会計士といった専門家を沢山抱えているところは、資産家に提示できる選択肢をたくさん持っています。セミナーの結論がひとつの結論に偏っておらず、豊富な選択肢を提示してくれる会社を選ぶことがおすすめです。

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