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相続した不動産は放置するくらいなら売却したほうがいい

中村 昌弘

中村 昌弘

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当然ですが、不動産も「資産」になるので、所有者が亡くなれば相続人が相続します。相続不動産は相続税もかかりますし、通常の売却と同じように譲渡所得税などもかかってきます。また、相続不動産を放置するとデメリットやリスクも大きいので、早めに売却してしまった方が良いでしょう。

今回は、相続した不動産を放置するくらいなら売却した方が良い理由を、2つに分けて解説していきます。その後に、実際に相続した不動産の売却方法を解説するという流れです。

目次

1 . 相続した不動産を売却しない場合のデメリット

1つ目の理由は、相続した不動産を売却しないと、以下のようなデメリットがあるからです。
・所有権を時効で失う場合がある
・損害賠償請求をされる危険性
・土地の境界線をめぐるトラブル
・未使用でも固定費や税金の支払いが必要

上記のデメリットは、不動産を相続した人からすると大きなデメリットになるので、相続不動産は絶対に放置しないようにいましょう。

1-1 . 所有権を時効で失う場合がある

相続した不動産は、相続登記といい、被相続人(亡くなった人)の名義から相続した人の名義に変更します。しかし、相続登記は義務ではないので、登記しないまま放置することも可能です。まず、そうなると誰の土地か分からない状態が続くので、相続登記は早めにしましょう。
たとえば、不動産を売却するときや賃貸するときは相続登記しなければいけないので、売却か賃貸をすれば必然的に相続登記することになります。

専有による所有権の移転

仮に、相続登記をしても、民法のルール※1では、その土地に20年または10年継続して専有した人の所有権を重視します。そのため、放置している不動産を第三者が長期間専有したときには、第三者に所有権が移ってしまうリスクがあるということです。

※1民法 162条参照
http://www.houko.com/00/01/M29/089.HTM

時効の完成の阻止

前項のように時効が成立して所有権を失うことを阻止する方法は、法的阻止が必要※2になります。そのため、不法占拠している人との調停や訴訟が必要になり、仮に時効が成立しているなら不動産を取り戻すのは至難の業です。

そのため、まずは相続登記をすることが大切であり、相続登記する前でも、不動産を放置しないことが重要になります。

※2※1の民放147条~156条参照

1-2 . 損害賠償請求をされる危険性

また、相続した不動産を放置すると、その不動産が原因で以下のようなことが起こり、損害賠償を請求される可能性もあります。
・相続した土地の植木などで第三者がケガをした
・相続した一戸建ての室外機が落下して隣家を損傷させた

民法上の規定では、その不動産に存在する工作物によって、第三者に怪我をさせたり、モノに損傷を与えたりした場合には、その不動産の占有者か所有者の責任※3になります。不動産を放置すると、このようなリスクも発生してしまうのです。

※3※2の民放717条参照

1-3 . 土地の境界線をめぐるトラブル

土地は隣地や道路との間に境界杭が打ってあり、その境界杭で土地の面積は決まります。仮に、境界杭を移動させる場合には、不動産の所有者同士が立ち合い、合意している前提で行わなければいけません。

不動産を長い期間放置していると、境界杭が破損して曖昧になったり、勝手に境界杭が移動させられたりするリスクがあります。修正する場合には訴訟問題に発展して、法的にしか解決できません。仮に、境界杭が移動させられて土地の面積が減少すれば、資産価値の減少につながります。

このように、特に土地を放置すると、境界に関してのトラブルになるケースもあるのです。

1-4 . 未使用でも固定費や税金の支払が必要

また、たとえ上述したトラブルがなかったとしても、不動産を所有しているだけで、以下のような費用がかかります。
・建物のメンテナンス費用
固定資産税

建物は築年数が経過するにつれて劣化していきますので、その建物を維持するためには補修費用や設備入替費用などのメンテナンス費用がかかります。また、土地も建物も固定資産税がかかり、建物がない土地は固定資産税が高くなる※4のです。

一方、不動産を売却した場合には、上記の費用はかかりません。売買時に諸費用などはかかりますが、上述した境界などのトラブルも防げますし、売却益はほかの用途に充てることも可能です。これらの理由から、不動産を放置するなら売却してしまった方が良いでしょう。

2 . 相続不動産の売却時にかかる税金と申告の時期

2つ目の理由は、相続不動産の売却時にかかる以下の税金は、売却時期によってルールが異なり、申告する時期も決まっているからです。

相続税
・所得税
・住民税

上記の税金の申告時期や、それぞれの税金についての概要、および特例などの詳細を解説します。

2-1 . 申告の時期

前項の税金は、以下のように申告する時期が決まっています。
相続税:相続開始から10か月以内
・譲渡所得税:売却した翌年の2月16日~3月15日
・住民税:所得税申告に伴い納付書が届く

これら税金関係の注意点は、申告時期を守らなければ延滞税がかかり、申告するには手間がかかる点です。

延滞税について

延滞税とは、所定の期日までに税金を支払わなかった場合に、支払うべき税金に加算されて請求される税金になります。そのため、相続税・所得税・住民税は規定の期日までに納税しないと、さらに税金がかかるというわけです。

延滞税は、延滞した期間などによって税率が異なるので、詳しくは国税庁ホームページ※5で確認ください。

※5国税庁 延滞税について
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/osirase/9205.htm

申告方法について

相続税も譲渡所得税も、所定の税務署に申告して納税するという流れです。この確定申告書類は、たとえば「売買契約書」や「経費の領収書」などの書類も別途必要であり、すぐに作成できる書類ではありません。慣れていなければ尚更時間がかかってしまいます。

そのため、「明日が期日だから急いで書類を作成しよう」と思って、すぐに作成できるとは限りません。だからこそ、相続不動産は放置せずに、すぐに税金を支払う準備をする必要があるということです。

2-2 . 譲渡所得税の支払い

相続不動産を譲渡(売却)したときには、その譲渡所得(売却益)に対して税金がかかります。そのときに覚えておく点は、以下の点になります。
・譲渡所得の計算方法
・譲渡所得税率
・節税に関する特例について

特に、相続不動産を売却したときは、相続税による節税効果や、売却時期によっての税率の違いなどがあります。あまり馴染みのない税金だと思うので、上記は良く理解しておきましょう。

譲渡所得の計算方法

譲渡所得を計算するときには、単純に売却益から取得費用を引くのではなく、「(売却価格-売却時にかかった諸費用)―(購入時のマンション価格+購入時にかかった諸費用-減価償却費用)」という計算式になります。要は、諸費用なども加味するというわけです。

注意点は、物件の取得費用が不明のときです。物件の取得費用は、売買契約書や支払った後にもらう領収書などで判断しますが、相続物件の場合にはその書類を紛失していることがあります。

その場合は、「売却価格×5%」で計算されるので、譲渡所得額が大きくなり税額も増えてしまいます。そのため、相続不動産を放置せずに、各書類大事に保管しておきましょう。

譲渡所得税率

譲渡所得の税率※6は、その不動産を売却した年の1月1日に、5年超保有していたかどうかで決まります。5年超保有している場合には、「長期保有」となり、以下の税率です。
・所得税:譲渡所得×15%
・復興特別所得税:所得税額×2.1%
・住民税:譲渡所得×5%

一方、保有期間が5年以下の場合は短期保有になり、以下の税率になります。
・所得税:譲渡所得×30%
・復興特別所得税:所得税額×2.1%
・住民税:譲渡所得×9%

上記のように、税率が倍近く異なる点は覚えておきましょう。

※6国税庁ホームページ 譲渡所得税
・長期保有
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3208.htm
・短期保有
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3211.htm

節税に関する特例について

※7国税庁 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3267.htm

3 . 相続不動産売却の手続き

では、さいごに相続不動産を実際に売却する際の手続きについて解説します。相続不動産を売却するときには、以下の点を覚えておきましょう。
・遺産分割協議が必要
・相続登記を行う
・不動産仲介業者の選定し売却活動
・確定申告をして納税する

3-1 . 遺産分割協議が必要

不動産を相続するときには、相続人や財産を整理して、相続人が複数いる場合には遺産分割協議をして遺産分割協議書を作成します。仮に、相続物件を相続人が共有して持ち合うときは、相続不動産を売却したり賃貸したりするときは、全員の合意が必要なので気を付けましょう。
そのため、特に不動産を活用する予定がなければ、遺産分割協議のときに売却の意思を合意しておくと良いです。

3-2 . 相続登記を行う

先ほども少し触れましたが、相続不動産を売却するときには、その不動産の名義人にならなくてはいけません。
そのため、遺産分割協議が終了した後に、被相続人から相続人へ名義変更(相続登記)をしますが、そのときは以下の点を知っておきましょう。
・現在の不動産名義人の確認
・昔の相続をやり直す場合の注意

まずは、登記済み証などで現在の不動産の名義人を確認しましょう。法務局で手続きをすれば謄本を取得できますが、面倒な場合は不動産業者にお願いすることもできます。

また、昔の相続をやり直す場合には、仮に相続するはずの相続人が亡くなっている場合は、その人の親族が相続するという「代襲相続」になります。そうなると、再度遺産分割協議が必要など、非常に手間がかかる手続きになってしまうのです。

その点からも、相続した物件は放置せずに、早めに遺産分割協議を行い、活用しないのであれば売却してしまいましょう。

3-3 . 不動産仲介業者を選定し売却活動

さて、遺産分割協議が終わり相続登記も完了したら、次は不動産仲介業者を選定して売却活動をしましょう。基本的に、相続不動産の売却は通常の売却と同じ流れになるので、以下の点に注意する必要があります。
・不動産の相場を確認しておく
・不動産仲介業者は良く見比べる

流れとしては、不動産仲介業者を選定し、媒介契約を結ぶことで、相続不動産の売却を正式に依頼します。その後に、広告をして見学者を集め、検討者には交渉をして申込を受けます。そして、売買契約をして不動産を買主に引き渡すという流れです。

不動産の相場を確認しておく

不動産仲介業者に査定依頼する前に、以下のサイトで不動産相場を確認しておきましょう。
・REINS Market Information※8
・土地総合情報システム※9

この2つのサイトを利用すれば、過去の成約事例を確認できるので、ザックリとした相場が分かります。
※8 REINS Market Information
http://www.contract.reins.or.jp/search/displayAreaConditionBLogic.do  

※9土地総合情報システム
http://www.land.mlit.go.jp/webland/ http://www.land.mlit.go.jp/webland/

不動産仲介業者は良く見比べる

相場を調べた後は、一括査定サイトなどで複数社に査定依頼しましょう。査定金額とその査定金額を算出した根拠は、不動産仲介業者によって異なります。不動産仲介業者を見比べるときは、査定金額だけではなく、その根拠を見比べることが大切です。 前項のように相場を調べておけば、その根拠の確からしさを検証することができます。どの不動産仲介業者に売却を依頼するかで売却金額は大きく変わるので、慎重に不動産仲介業者を選びましょう。

3-4 . 確定申告をして納税する

売却活動をして引渡まで終われば、いよいよ確定申告をして納税します。譲渡所得の計算方法や、確定申告をして納税する期限は上述した通りです。確定申告をして納税するときには、そのほかには以下の点を理解しておきましょう。
・確定申告書類の作成方法
・分離課税であること
・損失がでても確定申告すること

確定申告書類は税理士に依頼しても良いですが、5万円~10万程度の費用がかかります。そのため、一番良い方法は、国税庁ホームページ※10で作成することです。

また、譲渡所得は分離課税なので、給与所得などとは全く別で計算されます。ただし、譲渡所得がマイナス(譲渡損失)の場合には、条件が揃えば給与所得などから控除※11でき、結果的に所得税と住民税を節税できます。

譲渡損失がある場合には確定申告の義務はありませんが、節税につながる場合もあるので確定申告することをおすすめします。

※10国税庁ホームページ 確定申告作成コーナー
https://www.keisan.nta.go.jp/h28/ta_top.htm#bsctrl

※11国税庁ホームページ 不動産を譲渡して譲渡損失が生じた場合
http://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3203.htm

4 . 相続不動産は売却した方がメリットは大きい

このように、相続不動産は、以下の理由で放置せずに売却してしまいましょう。
・損害賠償などのトラブルに巻き込まれることがない
・所有するだけで費用がかかる
・早めの売却で税率が低くなり節税できる

特に、トラブルに巻き込まれるリスクを軽減できる点と、節税できる点は大きいです。相続不動産を放置するデメリットやリスクは大きいため、早めに売却した方が良いでしょう。

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