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空室解消に役立つ「ホームステイジング」の魅力と課題

川端 彰

川端 彰

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賃貸住宅の空室を解消する手法にもトレンドがあり、現在急速に広まっているのが、空室に家具小物をしつらえて生活シーンをターゲットにイメージさせる「ホームステイジング」という手法です。
噛み砕いた言い方をすれば、「モデルルーム化」ということになります。このホームステイジングについて、今回は詳細を紹介していきます。

目次

1 . ホームステイジングとは

ホームステイジングという言葉は、賃貸の世界では中々聞き慣れない言葉だと思います。不動産会社が家を売るときに、家具小物を設置して内覧者に実生活をイメージさせやすくして成約率を高めるための手法で、昔からありました。

1-1 . 大手仲介会社でも普及

昔から知られていたホームステイジングですが、売買仲介取引で大手不動産会社が当たり前のように用いるようになったのは割かし最近のことです。
空室一戸一戸に家具小物を配置するのはそれなりにコストも手間もかかるので、大手業者はあまりやりたがらないのですが、サービス競争が年々激しくなっており、買い手に提供できる優良物件を他社より早く仕入れるためには、「うちに頼めば高く早く売れますよ」ということアピールしなければなりません。

そのためどの業者もやらざるを得なくなり、例えば売買仲介4位の野村不動産アーバンネット(東京都新宿区)では、2017年の1年間でホームステイジングをした物件は815件あり、家具の設置から成約までにかかった所要期間は平均78日で、広報担当によると「成約率があがり、成約に至る期間も短縮された」そうです。
しかも同社の場合は、設置した家具小物を成約者に無償提供しています。競合他社を意識した大胆なサービスを実施したと言えるでしょう。

1-2 . 賃貸業界でも一握りの業者が実践

このように、戸建てや別荘の売買取引では、当たり前のように行われていた手法ですが、賃貸業界では近年まであまり応用されていませんでした。理由は、単に業者が知らなかっただけなのか、そこまでやらなくてももっと楽に埋まる手法があるからなのかはわかりません。

ただし、その効果を実感している売買出身者が賃貸業界に転じたときに、改めて賃貸の空室に応用しているケースは何社か確認しています。都内のある小規模不動産会社の社長はこう語っていました。

「売買取引で当たり前のようにやっていたから、賃貸も違和感なく応用していた。賃貸ではあまり空室のモデルルーム化は珍しいね」。
賃貸でも効果を確認できたため、空室が出るたびに特定の家具を買い揃え、実践しているそうです。

その他実践しているケースがあるとすれば、俗にいう「カリスマ大家」さん。賃貸経営に長けた有名な一部のオーナーが実践しているのを見聞きする程度でした。

2 . 賃貸での普及は道半ば

今や賃貸経営は「向かい風」にさらされています。新築のライバル物件が過剰に供給され、都心で築浅物件といえども家賃の下落を余儀なくされたり、半年も埋まらない空室が30%も占めているといった事態はザラに見かけるようになりました。
その中で「ホームステイジング」はひとつ有効な選択肢になってしかるべきなんですが、賃貸業界では中々普及が困難な事情があります。

2-1 . 多くの管理会社が対応できない

ホームステイジングを一から始めようとすると、それはかなり煩雑な作業になります。家具をそろえるといっても、その物件にどんな層に住んでもらいたいかによって、揃える家具小物のデザインや生活シーンが変わってきますし、またターゲットを明確に定めたとしても、その層にあったデザインをコーディネートするにはそれなりの知識と技術がいります。

普段、家賃の集金管理や建物の清掃・メンテナンス管理、クレーム対応等で手一杯の地元の管理会社にはそのような人材がいるとは限りませんし、いたとしても第一、数千戸管理している会社の場合、空室の都度、そのような対応する時間はまるっきりどこにもないわけです。

ホームステイジングの推進論者の一人である、賃貸経営コンサル会社のリアル・スター・コラボレーション(東京都新宿区)の星龍一郎社長は、「たまにお客さんであるオーナーさんに提案することがありますが、そのオーナーさんが遠方に住んでいらっしゃる場合、近くの管理会社にモデルルーム化を依頼することになりますが、やはり中々腰を上げてもらえません」と指摘しています。
煩雑であるだけでなく、保守的な業界であるが故に「新しい仕事を増やしたくない」という気持ちが働いている側面もあるのかもしれません。

2-2 . ついに代行会社が登場

そんな煩雑なモデルルーム化を代行する新しいサービスも出てきました。

例えば、引越し取扱い会社のパパネッツ(埼玉県越谷市)などはその代表的な存在です。家具小物の選定から家具レンタル、コーディネート、設置作業、そして成約後の移設・撤去まですべて代行します。同サービスに本腰を入れたのが2018年の始まりらしく、その理由が「賃貸管理会社の要望が増えたため」(担当者)だそうです。
こうした代行会社が増えたことで、賃貸業界でも着実に普及していきそうです。

3 . ホームステイジングの注意点

ホームステイジングを実施するうえで初心者が見落としがちな注意点があります。それは成約後の「家具小物の処理」です。

先のパパネッツの担当者によると、「成約した後、家具小物を別の空室物件に移設するとなると、業者手配などの手間がかかるうえ、顧客が居住を急がれている場合は、手配が間に合わなくなるリスクもあります」。

さらに移設先の空室にその家具小物がデザイン的にマッチしないリスク、移設先の空室が存在しない場合は、倉庫に保管する手間、さらに倉庫を持っていないオーナーや管理会社の場合、家具小物の置き場に困ることもありうるわけです。「家具小物を無償提供しようと思っても、成約の都度サービスしていたら、それこそコストばかりがかかってしまいます」(担当者)。

ホームステイジングを試すのなら、成約後の後始末まで視野に入れておいたほうがよさそうです。

4 . ホームステイジングは計画的に

ホームステイジングは空室を埋めるための有効な手法に違いありません。ただしターゲット選定を間違えたり、家具小物の配置が雑になれば、逆に成約から遠のいてしまうリスクがあることも頭に入れておかなければなりません。
成約後の後始末までイメージしながら計画的に実施することが大切です。

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