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インターネットマンションの光と影

川端 彰

川端 彰

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賃貸マンションの入居者が無料でインターネット回線を使える設備導入は、安定経営をしたい不動産オーナーの中では随分と一般的なものになりました。

しかし導入しただけで満足していませんか?せっかくネット環境を整えても「ネットがつながりづらい」とクレームがきては、逆に入居者満足度を下げてしまいます。追加施工の出費もバカになりません。

実はこうしたクレーム増に悩む不動産会社やオーナーが増えているようです。インターネットマンションの裏側で何が起きているのでしょうか。関係者の声を元にまとめました。

目次

1 . 入居者からのクレーム

「ネットが遅いです。どうにかなりませんか?」 今、入居者からこんなクレームが賃貸管理会社に寄せられているようです。都内の賃貸管理を手掛けるY社では、1年半前より冒頭のクレームに見舞われるようになりました。

クレームがきたからには管理会社は対処しなければいけません。
「オーナーさん、ネット回線の調子がどうも悪いようです。業者にメンテナンスを依頼していいですか?」

もちろんメンテナンス費用はオーナー負担。クレームが増えれば増えるほど、不動産経営の重しとなるため、オーナーからしたら耳の痛い報告。

「まるで本末転倒だ。これでは何のためにネット回線を導入したのかわからないじゃないか」

オーナーからはこんな嘆き節が聞かれるようになったそうです。報告した管理会社社員も心苦しい思いを強いられているといえます。

いま、賃貸アパート業界では、インターネット設備の導入機運が高まっています。国内人口減少と、新築アパートの供給過多により、築古を含めた賃貸住宅全体の空室数が年々増えています。
賃貸市場の調査を行うタス社によると、首都圏一都三県の木造・軽量鉄骨アパートの空室率は、2015年7月の30%から2年後の17年7月に31~38%まで上がりました。

そこで多くのオーナーや不動産会社は空室解消の「テコ入れ策」として、入居者からニーズのある人気設備を導入しようという流れができています。その人気設備のひとつが「インターネット設備」なのです。

2 . インターネット設備の価値

しかしなぜ「インターネット設備」なのでしょう。
「入居者はタダでネットが使える!」と聞けば聞こえはいいかもしれませんが、今の若者、いや中高年ですらスマートフォンを持ち歩き、何ならノートパソコン、WiFi端末を携帯している時代です。そのご時世にあって、わざわざ賃貸住宅にネット設備をつける必要性はどこにあるのでしょう。

鍵は、動画視聴ユーザーの増加にあります。Youtubeに代表される動画サービスが近年増え続けています。動画視聴で費やす回線の容量は、グーグルで調べものをするよりもはるかに大きい容量を費やします。
それが、皆が仕事を終えて自宅でゆっくり過ごしている夜の20~24時に一斉にスマホで動画を見ようとしたら、回線が込み合って接続が悪くなります。

そんなときに自分のアパートに「ネット回線」がついていると知れば、「自分のWiFi端末よりかは混雑していないだろう」ということで、アパートの回線を使いたい、というニーズが生まれるのです。

その証拠に、冒頭の賃貸管理Y社が入居付けを依頼している賃貸仲介営業マンからは「部屋探しのときに、お客さんから『このアパートの通信環境はどうですか?スムーズにインターネットできますか?』と聞かれる頻度が増えた」と報告があがってきているようです。

動画配信サービスの利用者が増えていることはデータが証明しています。
ICT総研が発表した「有料動画配信サービス利用者数・需要予測」によると、2015年末で980万人だったのが、2年後の17年末には1440万人。20年末には2010万人にまで増えると予測しています。

有料動画サービスとは「アマゾンプライム」「ネットフリックス」「hulu」などです。有料動画サービスだけでこれだけの人数が視聴しているということは、「Youtube」「インスタグラム」での視聴者数を含めると、もっと高い数値がでそうです。

3 . 接続不良はなぜ起こるのか

しかし、「接続不良」の原因は視聴人口の増加だけではありません。「ネット回線の導入施工に詳しくない職人による施工不良」という声もあがっています。

ネット回線の導入施工を専門に請け負っているジェイネッツ社の社員によると、「建物にネット回線を導入施工するには、専門知識が必要です。例えば、ケーブルを建物に設置するときに、そのケーブルが周囲の電波(ノイズ)を寄せ付けないよう、ケーブルの張り加減を調整しなければなりません。ケーブルが不必要な電波を拾ってしまえば、ネット回線に異物が入り込む形になりますから、結果として入居者のネット環境が悪くなります。このネットワーク回線の知識に欠けている職人が、あまりに多いのに驚くことがあります」

「修理にきてくれ」
ジェイネッツ社では、付き合いのないオーナーからこういう依頼が舞い込んでくることも少なくないようです。社員がアパートに駆けつけると、接続不良の原因は上記のようなものが大半だと聞きます。「おそらく、安く、てっとり早く導入をしたいと考えるオーナーや業者が、地元の電気屋に依頼していることも原因の一つではないでしょうか(同社社員)」

「安く、てっとり早く」といえば、費用対効果を追求しすぎるオーナー側にも原因がないともいえません。
インターネット導入は、回線の数が増えるほど工事費も割高になります。そのため、賃貸業界では「1棟につき1回線」が常識になっている向きがありますが、そうなると当然、1回線をシェアしている戸数が多いほど、回線が混雑する確率も高くなります。

ブロードバンド市場に詳しいMM総研の加瀬惇也研究員は、「ひどいケースでは、50戸で1回線をシェアしているマンションもあります。50戸の住民の大半がネットを使えば、すぐに渋滞になり、通信が滞るのは目に見えています」と指摘していました。

シェアする戸数は少なければ少ないほどいいですが、だからといって1戸につき1回線を割り当ててしまえば、それこそオーナーのキャッシュフローをひっ迫することになりかねません。

4 . 不動産オーナーが気をつけるべきこと

したがって、インターネット設備を導入したい不動産オーナーが心がけるべき点は次の二つに絞り込むことができます。

ネットワーク回線に造詣の深い施工業者を選ぶこと
導入の際は「費用対効果」偏重にならないこと

インターネットが生活に切り離せなくなったご時世です。業者だけでなく、導入を決断するオーナー自身に求められる教養のハードルも、年々高くなっているということを気に留めておきましょう。

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