HOME 賃貸経営 宅配ボックスの設置で補助金が下りる?不動産経営者も要注目の制度

宅配ボックスの設置で補助金が下りる?不動産経営者も要注目の制度

長嶋 シゲル

長嶋 シゲル

0

近年ネットやニュースでよく取り上げられる社会問題の一つとして、宅配便を配送する業者に対する再配達の負担増が挙げられます。ネットインフラの構築やネットショッピングの普及により、インターネットで買い物をする顧客が増えた結果、クロネコヤマトや佐川急便などの宅配業者、そして日本郵便などの負担が急増し、宅配の手が追いつかなくなっているという現状があります。
サービスを受ける側である消費者にもその点が問題となっており、居住用物件においても不在時に荷物の受け取りが可能な宅配ボックスの需要が増加しています。不動産情報サイトなどで人気の高い住宅設備でも、最近では上位にランクインしています。
そこで宅配ボックスの設置について、政府や関連省庁が行っている助成金支給制度とはどのようなシステムで運用されているのか、また今後の宅配ボックスは日本においてどのような位置づけになっていくのかを取り上げていきます。

目次

1 . 宅配ボックスの設置で受け取れる助成金とは?

宅配ボックスの需要がなぜ増えているのか。その背景にはネットショッピングの普及があります。店まで行かずとも商品が買えて、自宅やコンビニで受取が可能なネットショッピングは、単身者などから大きな支持を集めており、 Amazonや楽天といったネットショッピングモール、またヨドバシカメラや大手スーパーなどもネットショッピングサイトを展開しています。
特に送料が非常に安価、もしくは無料で利用しやすい Amazon は、ネットショッピング業界の雄とも言える存在です。大型家電や家具のみならず、スーパーやコンビニでも買える日用品や生鮮食品まで取り扱うようになり、最近ではそうしたネットショッピングを利用する人が増えています。
しかし実際の配達を担う宅配便業者にとって、そういったネットショッピングサイトは決して良い顧客源ではありません。安い委託費で多くの荷物を配達しなければいけないため、負担の割合が増えてAmazonとの取引をやめる宅配便業者も現れています。
さらに宅配を行う人員に不足が生じるようになり、2017年の年末繁忙期などはついには配達が追いつかないという状況にまで追い込まれ、いろいろなメディアで記事にもなりました。
また宅配便は一度届けたら終わりではなく、受け取る側が不在の場合は指定の日時に再配達しなければいけません。その再配達こそが特に宅配便業者の負担に追い打ちをかけています。
そこで国土交通省では宅配便業者の負担を減らし、労働時間を削減するための宅配ボックス設置を促進しようとしています。国土交通省だけではなく、環境省でも再配達を行うトラックが排出するCO2を削減するため、2つの省庁が同時に連携と支援を行いながら問題に取り組んでいます。そういった面もあり、社会的に注目される問題となっているのです。

一方、不動産投資の関係において、宅配ボックスは入居者にとって使いやすい設備として非常に人気が高くなっています。特に単身者の場合、平日はなかなか家にいることができず、荷物を受け取ることができません。再配達を頼んだとしても、週末になってようやく受け取れるというところでしょう。 しかし宅配ボックスが住宅に設置されているのであれば、そこに荷物を置いてもらえるので、平日でも荷物が受け取れます。共働き家庭も増加しており、子育て世帯にも需要は十分にあります。
また宅配便業者を装って住宅の中に侵入しようとする犯罪も、一人暮らしの女性には大きな脅威であり、問題視されています。しかし宅配ボックスがあれば解錠して直接荷物を受け取る必要はなく、防犯性を高める意味でも需要が高いのです。
つまり入居者の利便性、そして防犯面の両面で、集合住宅における宅配ボックスは、今後、必要とされる設備になっていくことが予測されているのです。

国土交通省が発表した資料『国土交通省「平成29年度 国土交通省 物流関係 予算概算要求概要」』(http://www.mlit.go.jp/common/001199027.pdf)、及び環境省の発表資料である『環境省「COOL CHOICE」』(https://ondankataisaku.env.go.jp/coolchoice/butsuryu/)を参照すると、 環境省では平成29年度予算として、宅配ボックスの設置に関して5億円の予算を計上しています。
また、再配達が労働時間とCO2の排出量の面でいかに無駄を生み出し、地球に悪影響を与えているかも具体的に示されています。

この予算が助成金となり、宅配ボックス設置の促進に使われているのです。 宅配ボックスの設置と活用は個人の利便性の問題だけではなく、流通業の効率化、環境保護のシステム上の整備など、非常に公共性の高い取り組みであることが分かるでしょう。

2 . 助成金制度の概要

では、気になる宅配ボックス設置の助成金制度ですが、どのような対象に支給が行われているのでしょうか。

http://www.env.go.jp/guide/budget/h29/h29-beppyo/2_b025.pdf

こちらは環境省が発表した国土交通省連携事業の施行になります。
この中の本文を参照すると

>宅配システムの低CO2化推進事業(新規) 宅配便再配達の削減に資するオープン型宅配ボックス の設置等を支援。
・間接補助対象:物流事業者、ロッカー設置者・管理者
・補助割合 :1/2
・実施期間 :平成29年度~平成33年度

となっています。つまり宅配ボックス設置における補助金の割合は、設置に関する費用の半額まで。そして実施期間は2017年から2021年の間。補助対象は物流事業者及びロッカー設置者または管理者となっております。
残念ながら現状、集合住宅のオーナーなどは、宅配ボックスの設置に関する補助金を受け取ることができません。

現在この補助金を受け取っているのはクロネコヤマト、佐川急便などの宅配便業者及び楽天といったネットショップ運営事業者が中心となっています。これらの業者は駅やコンビニに宅配便を受け取れるボックスの設置を進めており、行政側でも初年度で500ヶ所の設置を目標としています。業者は150~200万円掛かると言われている設置費用に関して、環境省から補助金を受け取っているのです。

一方で個人宅の宅配ボックスにも補助金を適用・支給すると、多額の費用が掛かることは容易に推測できます。宅配ボックス一個あたりの相場はおよそ4万円前後ですが、仮に半額に当たる2万円の補助金が個人宅1件に支給されるとしましょう。実は都内だけでも集合住宅の世帯数は約370万戸あると言われています。そのすべての世帯に補助金の支給を行うと、なんと740億円もの金額になってしまいます。
省庁といえども、それだけの予算を急には用意できません。そこで政策としてまずは多くの人間が利用できる場所に宅配ボックスを設置して普及させるなど、効率の良いインフラの構築を図っているのです。

3 . 助成金制度の今後

一方、個人宅などに対する宅配ボックス設置の補助金制度は全く考えられていないのでしょうか。
パナソニックではクロネコヤマトなど宅配便業者との連携事業として、エリア限定で宅配ボックスの設置を推進した事例があります。
対象となったのは福井県 あわら市です。

http://sumai.panasonic.jp/exterior/takuhai/combo/project/

上記のサイトによれば、福井県あわら市内の106の住宅に対してパナソニックが自社で販売している宅配ボックスの設置を行いました。
制度としては4万円を上限に、設置費用の1/2をパナソニックが負担。そして設置を希望する各家庭には、条件として2年間のモニター活動が求められました。
その結果あわら市内では全ての配達業務のうち、49%を占めていた再配達がなんと8%にまで減少しました。利用した顧客の98%から、宅配ボックスの利便性に満足したという回答が得られたのです。

それに伴い、宅配便業者の労働時間の大幅な減少、さらにトラックから排出されるCO2の削減が確認され、働き方や環境配慮面において非常に大きな効果が見られたのです。

この調査結果を受けての動きは、まだ具体的には出ていません。しかし、もちろん国土交通省や環境省などにもこういった結果は伝わっており、今後は集合住宅、戸建てなど各家庭における宅配ボックスの設置が後押しされていくかもしれません。

補助金に関しては環境省主導の制度となっていますが、国土交通省でも宅配ボックスの設置を推進するため、以下のような事業改正を行っています。
http://www.mlit.go.jp/common/001209836.pdf

上記は平成29年11月に国土交通省が発表した資料です。この資料によると > 国土交通省は本日、共同住宅における宅配ボックス設置部分の容積率規制に係る運用の明確化を図るため、特定行政庁等に対し通知を発出します。
○ 引き続き、共同住宅以外の建築物も含めた宅配ボックスの設置促進に向け、宅配ボック ス設置部分の現状調査を行い、更なる施策を講じることも検討してまいります。

となっています。集合住宅の運営側でも、入居者の利便性を向上させるため、宅配ボックスの導入を検討する事業者は増えました。しかし、土地用途別に設定された容積率の問題がありました。事業者がギリギリまで建物部分の面積を増やそうとする場合、宅配ボックスを設置するためのスペースが捻出できないという問題が発生したのです。
容積率の規制が宅配ボックス設置の妨げになることは国土交通省でも問題視されました。そのため調査結果を受けた国土交通省でも、『宅配ボックスの設置部分に関しては容積率に含めない』という緩和の通知を特定行政庁に対して行ったのです。

これにより、宅配ボックスを設置した部分は容積率の規制を受けずに済み、アパートやマンションなどの集合住宅の建築の際は、宅配ボックスの設置増が期待されています。
また、日本は晩婚化・非婚化が進み、特に東京都内では今後も人口増以上に単身者世帯の顕著な増加が予測されています。家族と同居していれば荷物の受け取りに困ることはありませんが、単身者やフルタイムでの共働き世帯にとってはなかなか荷物が受け取れないこともあります。
不動産物件の運営面においても、単身者や共働き世帯にとって利便性の高い設備を導入していくことは、必須の課題と言えるでしょう。

現在の宅配ボックスの平均価格は、一つあたり4万円ほどであり、それなりに導入のハードルが高い設備です。しかし4万円であれば、一ヶ月分の家賃で十分購入できる価格ですし、宅配ボックスが入居の決め手になった、また退去を辞めたという人が一人でも出てくれば、十分にペイできる設備だとも言えます。客付に苦労していて単身者をもっと呼び込みたいのであれば、補助金がなくても積極的に宅配ボックスを導入するべきです。
また宅配ボックスの需要が増えていけば、それにともない流通価格も徐々に低下することが見込まれます。より気軽に宅配ボックスが購入できるようになれば、費用対効果の高い設備として、マンションのみならず、アパートや戸建てにも普及するでしょう。

4 . 環境保護の観点でも宅配ボックスの設置は必要とされていく

現在の宅配ボックスの設置に関する補助金制度は宅配業者を対象としているため、集合住宅及び賃貸住宅にまで恩恵が及んでいません。駅など人が集まる場所での宅配便受け取り設備の導入に留まっています。
個人宅への設置となると膨大な予算が必要となるため、省庁でも簡単に補助金を支給できないのが現状でしょう。
一方で、民間が実施した『各家庭への宅配ボックス設置に関する調査』の結果を見ても、労働時間の減少そしてCO2排出量の両方で大きな改善結果が見られました。
労働状況の改善及び環境保護対策は今、21世紀の日本が本腰を入れて取り組まなければいけない問題であり、今後はさらなる対策が必要になってきます。
宅配ボックスの設置によってその二つが劇的に改善されることが分かった今、国としてもこの結果は決して見逃せません。
マンションの各部屋への宅配ボックスの設置は難しいかもしれませんが、それぞれのマンションのエントランスに住民が自由に利用できる宅配ボックスの設置を義務化し、補助金を支給する。こういった対策は先に挙げた容積率の緩和の事例から見ても、検討されているかもしれません。
21世紀に入って長期優良住宅や省エネ住宅が政策として推進されたように、 今後は集合住宅への宅配ボックスの導入も省エネ対策の一環として推進されることは十分考えられます。

同じカテゴリーの記事

ページトップへ移動する
icon-article icon-articleCategory1 icon-articleCategory2 icon-articleCategory3 icon-articleCategory4 icon-articleCategory5 icon-articleCategory6 icon-beginner icon-check icon-glossary icon-kentei icon-popularwords icon-premium icon-realvoice icon-recommend icon-seminar icon-talkroom icon-trend icon-user icon-voice