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アパート融資の引き締め!節税のための安易な建築は承認されず

川端 彰

川端 彰

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「アパート融資の審査が厳しくなった」。この一言が大手ハウスメーカー名古屋支店の幹部からこぼれたのが2017年8月。
近年、相続税対策によるアパート・賃貸マンションの建設ラッシュも一段落し、今後は「アパートの供給過剰」が懸念され始めて間もない頃での出来事でした。
だが、融資審査が厳しくなったといってもどう厳しくなったのか。それは全国的に厳しくなっているのか。融資事情の話は常にブラックボックスに入ったままでわかりにくい…。詳細を調べてみました。

目次

1 . アパート融資の引き締めは事実?

1-1 . 土地持ちでも融資難易度アップ

融資審査の難易度が上がったのは、土地を持たないサラリーマン投資家だけでなく、土地持ちの地主・家主も同様のようです。
融資を受けるというと、普通ならば土地持ちの地主・家主は、融資の局面においては、土地を担保に出来るという意味で、圧倒的に有利な属性でした。なぜ投資家も地主も関係ないのでしょうか。
大手ハウスメーカー幹部によると、「金融機関が重視し始めたのは、融資対象となるアパート経営の事業性。ひとつの事業としてきちんと収支が成り立つかどうかを見るようになった」とのこと。一体、何があったのでしょうか。

1-2 . 「アパートローン」監視強化の姿勢、鮮明に

アパートローンの融資審査が厳しくなったことがわかる公的文面は、日本銀行が2017年3月に「2017年度の考査の実施方針等について」と題した書類から確認できます。そこには、「賃貸不動産向けを中心とする不動産関連貸出など、金融機関が与信期間や事業特性などを踏まえ、事業の将来性を適切に見極めているか、採算性を組織的に検証しているかなども点検する(一部略)」と書かれています。
つまり、日銀が各金融機関への監視を強めたことにより、地銀や信金は、安易に不動産投資のための融資を実行できなくなりました。
その背景には、今年4月に行われた金融庁と金融機関の意見交換会では「築後15年程度を経過すると物件収支が赤字となる割合が増加する」という投資リスクの一部が主な論点として取り上げられたことがあります。金融庁と金融機関の間で賃貸経営のリスクが共有されたということです。
相続税節税のために「とりあえず建築」するのはよくないよ、危ないよ、ということを各金融機関に呼びかけました。

1-3 . 地方財務局が管轄地銀を指導

東海4県の地銀・第二地銀を監督・検査する「東海財務局」は、アパート融資の注意喚起に関して金融庁と連携しています。金融監督第一課の担当者は「確かに地銀幹部と直接接触して注意喚起したことが何度かあった」と話していました。そしてこれは、関東財務局や関西財務局など他のエリアでも同様のことが起きています。

1-4 . 新築貸家の着工件数は前年割れ

融資引き締めの影響は、国土交通省が昨年10月31日に発表した「建築着工統計調査報告」にもあらわれています。昨年9月に着工した新築貸家は3万7521戸、前年同月比で2.3%減っています。前年割れは4ヵ月連続の減少となりました。

2 . 事業性の高さは無視できない

2-1 . 融資厳格化を受けてハウスメーカーの対応に変化

融資の引き締めは、賃貸業界のなかで瞬く間に話題になり、ハウスメーカー各社は対応を余儀なくされています。
例えばパナホーム幹部は、「利回りが低くなる賃貸併用住宅はむずかしくなった」と話しており、数年前から開発に前のめりだった多層階住宅の提案を一層強化していくそうです。他、賃貸住宅としても民泊ホテルとしても使える「アパートホテル」を建築しようとしている動きも各社で見られます。訪日外国人客、つまりインバウンド需要を取り入れて収益性をあげていこう、という発想です。

一方、セキスイハイムの看板を掲げる積水化学工業・住宅カンパニーの関口俊一プレジデントなどは、「よほどいい立地でないと、新築の賃貸はもう建てられない」と述べています。
詳しく聞くと、「既存の地主に提案したくても、すでに持っているアパートの入居率があまりよくないと、そういう人は追加で建ててくれない。提案が難しくなった」と話しており、これからは「既存の管理物件の入居率アップとリフォームの提案を社員に促していく」としていました。積水化学工業のように事業が多角化している企業の中には、消極姿勢になるだけの会社もあるようです。

2-2 . 「供給が需要を生む」動きに期待

アパート経営をあくまで「事業」「投資」の側面で考えると、供給過多とはいえ、まだまだ建築の余地があると考える専門家もいます。
一般財団法人日本不動産研究所の吉野薫主任研究員は「人口が減っても、人口動態が変わっている。今でいうと、共働き世帯と高齢者層が増えている。こういう人たちが潜在的に望んでいる利便性の高い賃貸住宅はまだまだ足りていない」と話していました。
国内の賃貸住宅は、羊羹型の箱のようなアパートが大半で、利便性が高いものは都市中心部にしか普及していないのが現状です。「人口動態の変化」は、今後、収益性の高い賃貸住宅を開発していくうえで大きなキーワードになりそうです。

3 . どちらにせよ節税したいだけの建築は避けるべき

金融機関がアパートローンの引き締めを始めたのは、投資家保護の観点からでした。節税が目的になってしまうと、賃貸住宅を建てることそのものが目的となり、十分な事業計画が練られないまま建築されてしまいます。
もちろん賃貸住宅はひとつの投資商品なので、計画性のないもの、収益性の見込めないものは、当然、その分リスクが高くなります。投資商品である以上、やはり利益を見込めなければいけません。今後賃貸経営を始める方は、相続税や所得税の節税一辺倒にならないよう十分気を付けてください。

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